愛知県名古屋市を拠点に、AIを活用したソフトウェア開発やスマート農業の研究に取り組むABC株式会社が、9月10日から『AIに農業はできるか?』という社会実験を始めています。
この実験は何がユニークなのかというと、AIが農業を「お手伝いする」のではありません。
栽培に必要な判断を、すべてAIに任せます。
対象となるのは、およそ1,000平方メートルの畑で育てる小麦と、いちご100株。
この実験では、AIが農業に関する意思決定を行って、人間はその指示を受けて実際の農作業を担当します。
つまり簡単に言えば「AIが考えて、人が動く」という農業です。
しかも実験では、人の身体や第三者に影響する可能性がない限り、たとえ人間から見て「その判断、大丈夫かな?」と思うような指示でも、AIが判断した通りに実行する予定だとしています。
では、AIは何を頼りに判断するのでしょうか。
畑には高画質のネットワークカメラを20台設置。
さらに、温度や湿度、土の中の水分量を測るセンサーも用意されています。
インターネットには衛星通信サービスの「スターリンク」を使い、AIが利用するコンピューターとして「NVIDIA Jetson Orin Nano Super」というマシンが2台用意されています。
さらにAIには、オンラインで商品を購入できるアカウントですとか、農薬や肥料を購入するための決済枠、メールアドレスやSlackのアカウントまで与えられているそうです。
もちろん、実際に畑で身体を動かすのは人間です。
従業員2人と必要な農機具、そして畑が用意され、AIの指示を人が実行していきます。
実験期間は、来年、2027年6月末まで。
ここで確かめたいのは、農業に必要な判断を100パーセントAIが担った場合に、作物の栽培をどこまで成立させることができるのか、ということです。
そして、その先にABC株式会社が見据えているのが「フィジカルAI」を活用した農業です。
フィジカルAIというのは、コンピューターの中だけではなく、現実の世界を認識して、判断し、実際の動きにつなげていくAIのこと。
今回の実験では、AIが判断して人間が作業しますが、将来的には、今、人間が担当している部分をAIロボットに移していく農業の姿を想定しています。
つまり今回の実験は、いきなり農作業のすべてをロボットに任せるのではなく、まずは「AIに農業の判断ができるのか」を実際の畑で確かめる段階というわけです。
ちなみに実験場所は非公開。
周辺の農業者に影響が出ないよう、実験する畑に隣接する農地も、すべてABC株式会社、または関連法人の畑にして実施されています。
経験や知識がものをいう農業の世界で、AIだけの判断はどこまで通用するのでしょうか。
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